√番外編作品集
敦子はドリンクバーのグラスを持ってきた河田に聞く。
河田はにっこりと微笑むとカラコン越しに敦子にアイコンタクトのウィンクをしてみせた。
「あいつのウソは誰かが泣きそうだな」
オレンジジュースにストローを差込んで、ケータイを見る。
「山岡は? 約束、18時だろ、珍しく遅いな」
言った途端、ケータイが鳴った。
待ち受けには「山岡千恵」と表示されていた。
3コールほど鳴らした後に通話ボタンを押す。
「もしもし? 山岡? 今どこ?」
『潤? 遅れてごめんね、さっき河田くんから電話があって、敦子が駅前のキャッチに声かけられて逆上して仕掛け技入れて大騒ぎになってるから助けてって。駅前に来たんだけど…』
「……はぁ? 敦子は目の前にいるよ。エイプリルフールだよ、だまされるな」
駅前って言ったら、遠回りになる。
『え、そうなの? なんだ、探しちゃったよ~!』
エイプリルフール、思い切りだまされてる……
「早く来いよ、河田もいるから、仕返しに一発殴ってやれ」
通話を終了するとため息をついた。
「どうしたの?」
「山岡のヤツ、河田にだまされて変な足止めくらったらしい。今駅前だって」
「あ、そっか潤に電話してきたのか、潤にもケータイの電源落としてもらっとけばよかった」
敦子はよく分からない反応をして席を立った。