√番外編作品集


今日は、特別な日だし、ちょっとくらい……


ドキドキしながらストローをくわえようとすると、照明がゆっくりと落ちた。

「?」

予備照明がぼんやりと輝いていたので、停電ではないみたいだ。

「わぁ………キレイ」


高い天井に小さな光が投影されて、プラネタリウムのような演出がされていた。

そういえばここ「カフェマルコ」は「星座」や「天体」に由来するメニュー名が多い。夜になると高い天井一面がプラネタリウムになるという話はどこかで聞いたことがあったっけ。

『どうして今日は、エイプリルフールなんて呼ばれるようになったんでしょう』

急に店内のBGMから切り替わって声が入った。

視線をカウンターへ向けると、河田君がマイクを握っていた。

視線が合うと、河田君はいつものウィンクをパチ!とこちらへ投げてきた。 

『一説によると、4月1日を「嘘の新年」として祝っていた人たちをフランスのシャルル9世が逮捕・処刑したことに端を発し、13歳という若さで処刑された少女への 哀悼の意を表したことから始まったそうです』

キラキラと天井の星が輝いている中、急に灯りが私の足元へ向けられた。


『しかーし! 本日はこちらの千恵さんのウソ、偽りない18歳のお誕生日! おめでとうございます!』


え?

ええ?



驚いて周囲を見回すけど、暗くてよく周囲の状況が分からない。

拍手がちらつく中、河田君がテーブルにケーキを持ってきてくれる。

その手には暗闇をはじき返すように18本のローソクの灯りが灯っていて

その後ろに河田君と敦子、それに潤が微笑んでいた。
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