√番外編作品集
「潤の傘、すごいキレイ! 内側は青空のプリントなんだね」
俺の傘は外張りと内張りで、色と柄が違う。
外はどこにでもありそうな黒い単色だが
内側は青空がプリントされた傘だった。
日本のものではないので、少し重いから女子には向かない。
デザインは女子の方が好きだとか言いそうだけど。
「ずっと使ってるから古いけど……」
「潤が持ってるものって、どれもこれもみんな潤らしいね」
俺らしい、って何だろう。
俺は外と中とでは違うってことだろうか。
「1つ1つ意味があるものばかりでしょ?」
山岡の声は、はしゃいでいて、いつも以上に幸せそうだ。
「今日、楽しかった?」
「楽しかったよ! 家に帰ってもケーキがあるけど、もう食べられないな」
山岡は片手で魚のヘアピンを握りしめたまま、坂を下っていく。
俺がそれを気に入ったんだと話をしたら、興味深そうにヘアピンを見つめて、それからそれを袋にしまわずずっと握りしめていた。
歩くたびに、雨粒に反射した光が、銀色のヘアピンを照らした。
よっぽど気に入ったんだな。
「昔ね、今日誕生日なんだよって友達に言ったら、エイプリルフールだから、ウソでしょって言われたことがあって。なんでかすごいショックだったことがあったんだ。
それから誕生日あんまり好きになれなくて……でも今日はすごく嬉しかったよ」
「イベントがある日に誕生日が重なるっていうのもイロイロ複雑だな」
俺の言葉に、そうだね、と山岡は笑って、赤信号で立ち止まった。