√番外編作品集
『私は、死の待ち受けで潤と接点があっただけ……』
自分の声がして、ドキっとした。
『それだけ、たったそれだけ。敦子みたいに、潤との深い絆があったわけじゃない。潤にとってはただのクラスメイトで死の待ち受けさえ消えてしまえば、私なんて』
出して
やめて
ここから出して!
この暗い部屋から、出して!!
『この喉が紡いだ全ての歌へ』
鈴のような、歌のような声が聞こえた。
垂れ下がった輪の向いに、乱れた黒髪に白い顔が浮いた。
暗闇の中で、ガラスの目が、私を射抜く。
『私が信じたいと願う人へ』
蔵持七海
私を殺しにやってきた──√の女
『さよならのキスを込めて』
「助けて潤! たすけて、たすけて──来ないで、来ないで!」
暴れると私の体重を支えていたスピーカーから足がずり落ちた。
首に掛かっていたのは、輪だった。
苦しさに呻く前に、蔵持七海の笑顔が見えた。
弓のようにつり上がった赤い唇。
ガラスの瞳は私を見ていた。
満足そうに。