√番外編作品集
傘の内側に小さなタグが付いていることに気づく。





刺繍糸でイニシャルが刺繍されていた。





「J.K……」



この傘を貸してくれた『二条西高校の後輩』は『J.K』さんというのか



これだけ条件が揃えば絶対に持ち主に返せると思えた。


それにイニシャルが縫い取られているということは

なくしてもいいような傘じゃない。


……大切な傘なんだ。


ビニール傘でもないのだから

当たり前だと思いながら

七海はタグから手を離して、傘の中の青空を見つめながら駅へ向かった。


空も海も、果てがなくて好き。

制限なく、全てを包み込んでくれる。


七海はやっとドキドキの落ち着いてきた胸を撫で下ろしながら、前を見た。
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