√番外編作品集
陽気な待ちウタで、目を覚ました。
目を覚ましたはずだけど、それは夢の続きのようだった。
「きれいな瞳ね、フフ」
今喋ったのは、私だろうか
体から、自分は切り離されてしまったように浮いていて足に力が入らない。
いや足なんてない。まるで霊体離脱してしまったかのように、自由がきかなかった。
「その瞳、すきよ、わたし」
辛うじて動かせる目線を操作する。
足元には、ストロベリーミルクの棒キャンディー。
目の前には、赤と白。
手の先には、河田君の襟首。
河田くんの右手には、ケータイ。
何をしてるのか、『私』は
河田君を傷つけていた。
「山岡ちゃん、すぐ、あいつが来る─から……」
ケータイが鳴り続ける。
ランプが輝く。
「黒沢なら……」
私は向いの壁に、まるで人形を投げるように河田君を投げつけた。
ずくん、という音をたてて壁にぶつかると、河田君のケータイが手から離れて病院の冷たい床に回転して落ちた。