√番外編作品集
翌日は少し微熱が出ただけだったので、学校へと足を進めた。

月曜日の学校というのは、熱がなくても怠い。


潤は、昨日とうって変わった空を見上げる。

あくびを投げながら二条西高校へ向かっていた。

いつも通りに校門を潜り、いつも通りにクラスへ向かう途中、保健医の若生に声をかけられた。

「黒沢ー」

「おはようございます……」

「ありゃ風邪? やだねー学校来るんじゃないよ」

保健医はそんなことを言いながら手の中のものを差し出してきた。

「これ、お前のじゃない?」

保健医の手に修められていたのは黒い傘だった。

「今日さー朝早くに校門あたりに立幸館の女の子が来ててね、ウロウロしてるもんだから声かけたら、コレ渡されて。落とし物だって?」

「はぁ……」

傘を広げると、たしかに自分の傘だ

潤は内側に広がる青空とイニシャルを確認して閉じた。

「なんかメッチャ警戒されたんだけどさー私はそんなに怪しいかね」

「口を開かなければ、学生のサボリもさり気なく無視してくれるいい先生ですが」

「お前も口さえ開かなきゃ、期待のできる学生だよ」

保健医はちょっと怒った素振りをして続けた。

「お前、前保健室でズル休みしたとき、傘忘れたろ。そんとき私が一度借りてたから、覚えてたんだよ」

「借り……」

勝手にか。

どうせこの教師のことだ、コンビニでも行っちゃおうかな、とかそんな理由で使ったに違いない。

「ズル黙ってやってんだから、細かいこと言うんじゃない。それ、内側と外側で柄違うヤツだろ」

だから覚えててさ、と言うとヒラヒラと手を振った。
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