√番外編作品集
「ねぇ、黒沢君、あそこなんで左辺にいくの?」


はじめて声をかけた。

彼は、私の声に気づいてくれた。

黒沢君が私のノートを覗き込む。

その目線が追うのは、死の待ち受けでぼろぼろになったあまりにつたない私の式。


「お前、だってここで左辺にx置き去りにしてる」


トントン、と軽快にノートに彼の指が踊る。


繋がった

繋がったよ。


耳鳴りがする頭を押さえ込むように

お礼も言えないまま、急いでシャーペンを走らせた。



"昼休み、屋上に来てくれる?"
< 167 / 256 >

この作品をシェア

pagetop