√番外編作品集
人を寄せ付けない空気がある人間だったが、好かれる相手にはとことん好かれるタイプだ。

まだ意思の疎通が出来ていない所も多かったが、俊彦もまた彼のことを気に入っていた。

女子2人の会話を右から左に流していると、暫くして席の前に人影が生まれた。


「待たせた」


噂の黒沢潤だった。

席に着くとメニューも見ずにウェイターにオレンジジュースを頼み、ふ、と息を吐いてみせる。

外が暑かったのだろう。

「久しぶりです。堀口さん」

潤の言葉に、黙って頷いた。

「で? この会合はなんだ?」

俊彦が聞きたかった言葉を、よりにもよって潤が言い放った。

だが潤の言葉は、まっすぐ敦子に向かっていた。

「え、いや。別にこれといってお題があるわけじゃないんだけど、堀口さんとか全然会ってなかったし、その後大丈夫かなとか」

敦子は焦って手を顔の前で振った。

「堀口さんは受験生なんだぞ、お前」

潤はげっそりして、敦子を軽く叱咤する。

「なんかあるって言うから、わざわざ俺からメールしたってのに」

「ごめんごめんだって私、知らないんだもん。そーだメアド教えて! 堀口さん」

敦子は言って、ケータイを出してきた。

のろりとケータイを出して、メニューボタンの次に「0」を押す。

プロフィールの下に電話番号とメールアドレスが表示された。

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