√番外編作品集
「その後は、立幸館高校とかは大丈夫ですか?」

千恵がカフェモカを口にしながら話題を切り出した。

「周りではまるでなかったことになってるよ。あーそんな変な事件あったねってくらいだな。蔵持や池谷、吉沢は完全に退学扱いになったし。」

俊彦はケータイを敦子に渡し苦笑した。

千恵の言っているその後とは、言わずとも分かる「死の待ち受け」のことだ。

「二条西も表示され続けてる人は今のトコいないな」

潤の言葉に千恵がゆっくりと頷いた。

「完全に、消えたよね」

彼女の言葉に全員が頷いた。

「じゃ、記念に今日はみんなでプリクラっ」

敦子が手を上げて笑った。

潤は露骨に嫌な顔をして、オレンジジュースを吸い上げるストローから口を離した。

「こんな暑い日に外でブラブラする気にならない」

「またーそういうインドア発言ー」

敦子の笑い方が少しだけ渋谷景に似ていると堀口俊彦は思い、じっと見つめる。

炭酸の泡がパチパチと弾けるような軽快な笑い方だった。

「まぁ息抜きにはなるよ、黒沢も付き合え」

ゲンナリとした視線を一度俊彦に向けてから潤ははぁ、とため息をついた。

「まぁ、受験生の堀口さんがそう言うなら」

「やった♪ねーじゃあさー二条のPARCO行こうよ。千恵、改装したの知ってる?」

女子2人が盛り上がってる。

1つ下というだけで、俊彦には2人がずいぶんと幼く見えた。

「振り回される覚悟して下さいよ」

潤が恨めしそうな呟きを落とすが、俊彦は笑顔を投げてみせた。

「女の買い物の大変さは慣れてる」

グラスのオレンジジュースを全て吸い上げると、潤は氷をストローで弄った。

「少しくらい付き合ってやれよ。死の待ち受けから解放されたんだから」

潤は猫のような仕草で、力の抜けた表情で肘をついた。

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