√番外編作品集
「妹? そうだね堀口くんは妹がいそうな感じがするよ、世話好きそうだ」

ふわ、と重い夏の雨の空気を紫煙がゆるく包み込む。俊彦はタバコの香りが嫌いではなかった。

「霧島さんにも妹いますよね」

組んだ足を見たまま、俊彦は霧島の顔を見ずに呟く。

その問いかけは、ひとつの『探り』でもあったが。暫くの無言の空間に耐えられず俊彦は続けた。

「俺の見当違いだったらすいません」


「───いるよ」


ゆっくりと視線を彼へ戻した。

サングラスの奥の色素の薄い瞳。

俊彦はこの瞳を知っている。

「黒沢達は蔵持と会ったことがないから分からないと思いますけど。俺は分かりましたよ」

「そうだね君は七海とクラスメイトだったんだから、気づくよね」

彼は苦笑してサングラスを外し眼鏡拭きを引き出した。

咥えたままのタバコから、灰が落ちた。

霧島からすれば思いもよらない問いかけだった。告げるつもりも、必要もないと思っていた。

「七海は僕の妹だよ、父親としか血が繋がってないけれど」

俊彦は、じっと霧島を見つめていた。


そう、似ている。


吸い込まれそうなガラスの瞳だけでない。繊細な頬の線と──はにかむ時にできるえくぼ。
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