√番外編作品集
「河田君こそ、どうなの? さっきの、A組の北川さんだよね? すごい怒られてたけど、本気なの?」

山岡ちゃんの言葉には心配が80%くらい含まれていて

俺の恋愛観を知りたいとか、そういう様子ではないみたいだ。

「俺はいつでも本気のつもりなんだけどー」

そうなの? というあからさまに疑いの視線。

まぁ、一般的に俺は、タラーシだの二股だのって認識だからね

さっきのあれもあるし

疑いの目線は理解できる。

「俺にとっての境目ってさ、ないんだよ。博愛主義?」


山岡ちゃんの視線が頬のあたりに刺さる。 
俺は気にせず、遠く夏の空を見て続けた。

「でもさ、世の中のカップルは2人セットじゃん? ひとには必ず、つがいになってる特別なひとがいるわけだ。なら、俺にも絶対いるはずで……こう、なんていうのか、特別に好きになれる相手探してるの。山岡ちゃんにとっての黒沢みたいな奴かなぁ、普通のスキじゃなくて、愛してるっていうの? 女の子はみんなスキだからさ、なんていうか、飛び抜けた存在が欲しい」

「河田君ってさ、恋愛観がハッキリしてるのが潤とちょっと似てるね」

「え? あの恋愛オンチと同じって……」

「潤はスキか、キライかっていう境目をすごく明瞭にしてる。スキの上にある、特別なスキって気持ちもすごくはっきりしてるんだよ」

「あぁ……そーなの? その辺は黒沢に恋したことないからワカンナイ」

「その中で、敦子は潤の特別なスキ、に一番近い」

「山岡ちゃんも近いと思うよ」

フォローじゃないけど、口から言葉が滑って出た。
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