√番外編作品集
「家族は?」
「え……と、もう帰ったよ。消灯時間も近かったし、お父さんも医者だからあまりウチを開けていられなくて」

河田君は私の言葉に頷きながら、ベッドの傍に置かれた丸イスに座った。
ほんの数十分前はそこに大好きな人がいた。
河田君は彼とはちがってくたびれた半袖のシャツ、腰に巻いたグレイのEASTBOYのカーディガン
少し・・・というより、思い切り栗色の跳ねた髪。大きな目は、グリーンのカラコンが入っていて、いつもより大きく見えた。

ちなみに、校則違反で昨日もちょっと注意したけれど笑顔で流されてる。

「黒沢に頼まれた。山岡ちゃんの傍にいろって」
「潤に?」
「そ、怪我さ、大丈夫?」
「うん、切り傷と打撲程度だよ」

首を傾けて、河田君は私を見て微笑んだ。

私の大好きな人、潤も具合が悪かった。
彼は北宮のライブハウスに閉じこめられて意識不明だった。

潤も体調が悪いんだし、寝てなきゃいけない。
でも同じ病院にいると思えば安心できた。

河田君に怪我の具合を伝えながら、笑顔を作ると後頭部と肩胛骨のあたりが痛みでズキリとする。

「詳しくは聞かないけど、無理すんなよ?」
「うん……ありがとう、こんなに遅くに…」
「余裕っしょ、だってもう試験も終わってるしさ~」
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