√番外編作品集
「俺のy値を探す手だてにする。一応な、相沢と岸三田と大河原からは話聞いてて」

こいつは数学バカだから、アリストテレスだのユーグリットだのと骨になった偉人を好きだと言ってるが

聞きたいのは「尊敬」とかいう好きじゃなくて、もっとお手軽で自分にとってリアリティのある話だ。

「…y値…?」

鋭い視線を受ける前に説明をする。

黒沢はやっぱり女のこと、と呆れていたが。

「山岡ちゃんがさ、お前と俺の恋愛観が似てるッて言ってたからさ」

「山岡がそんなこと言ったのか?」

黒沢は意外そうな顔をする。

「うん、山岡ちゃんが言ってた」

「ふーん、そうだな。区別してるって言ったらそうかもな。でもお前と一緒にされるのは間違えてるけど」

区別しないってことは俺と同じってことだよな。

一緒にされたくない理由は、あえて聞かないようにしよう。

「なぁなぁ、運命の人は」

身を乗り出すと、黒沢が身を引いた。

「うんめいのひと?」

「例えば結婚したいなーって思う人とかさ、ずっと一緒にいたいって思う人だよ、いた?」

気が早いヤツ、と黒沢は言ってストローの袋を弄る手を止めた。

「いないよ」

「え~特別なヤツ、やっぱりいないってことか? 隠すなよ、親友だろ俺たち」

山岡ちゃんの言葉を思い出す。

こいつかなり難易度高いよ?

苦労するよ、山岡ちゃん。

ちょっとがっくりした俺を見て、黒沢は続けた。
< 32 / 256 >

この作品をシェア

pagetop