√番外編作品集
「いない、っていうか……特別な人って定義は人によるし、お前の言ってる結婚したいとかそういう対象はいない」

そもそも高校生で結婚まで突っ走るなよ

黒沢は言いながら、オレンジジュースを吸い上げた。

黒沢、お前はy値、興味なしか。

「じゃー今までお前、どんな付き合いしてきた訳?付き合ってた時くらい、愛あっただろ? 敦ちゃんとかさ」

「敦子? 敦子はイトコだって言ってるだろ。しつこいなお前」

「そうだけどさ、付き合ってたんだろ中2の頃」

「あぁ冬には別れたけど」

単調な黒沢の反応に、続きを聞くのが悲しくなって辞めた。

「スキとか、そういう人に押しつける感情はそもそも俺よく分からない。
そんな流動するものが、自分の本当の在処を指し示すものになると思うか?
別に恋愛を否定する気は全然ないけど、恋愛中心に生きるのはバカだぞ」

や、愛されれば嬉しいし

嬉しいから愛しちゃうし

それって有益じゃないか?

「相手は自分を映す鏡にはなるけど、相手に依存しすぎると本当に見つめるべき自分が見えなくなる」

黒沢は手を伸ばして俺の胸元を刺した。

「お前だってそれ、分かってるんじゃないのか?」

黒沢の言葉に、何か心の中で動くものがありながらも

それが何だか全く分からない自分がいる。

「俺とお前は正反対な所も多いけど、根は似てるからこうやって一緒にいられるんだよ」

「なに? どこどこ、モテポイント??」

「ちがうよ。どこか人に対して冷めた態度になる」

黒沢の黒い目が、瞬きせずに俺を見る。
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