√番外編作品集
黒沢はフォークをサラダに定めたまま、いつもの調子で続けた。

「うん」

「で、付き合ってみようと声をかける条件は何だ?」

「特出して俺とピント合いそうだなーってビビっと来た子」

「それで付き合うだろ? それで次に長続きしないのは何でだ?」

「俺がまたピント合いそうかな?って次の子にお手つきするからかな」

「それをまず辞めろ。そうしないと次の条件に進めないことくらい、バカでも分かるだろ」

「でも、逃がした魚はおっきぞとかいうだろ。一期一会だろうが」

俺の言葉に黒沢はこれでもか、と呆れた。

「ほら、やっぱりお前他人に対して淡泊なんだよ。そんなヤツが、本当に大切だと思うヤツを見つけて大切にできるのか?」

黒沢は間髪置かず続ける。

「お前がやってるのは、花嫁捜しって言う名前の、女泣かせだよ。"南都美"の件だってそうだろ。お前この後のこと考えてるのか?」

「後って……」

「敦子じゃないけどな、お前あの後なんか連絡とったか?」

「取ってない。電話もメールもダメだっていうしな。あぁそうそう、こういうアッサリしたところがいけないのかなって思ったりもしてるよ、一応」

「じゃ、がんばって連絡取って、どうにか次の条件まで進むんだな」

「黒沢ぁ~ 俺どうすればちゃんと恋できんの~?」

情けない泣きごとに、黒沢がまたため息した。

「y値が出せないなら、x値でも見直せばいいんじゃないのか? あんまり固執すると、大変なことになるぞ」
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