√番外編作品集
河田君は膝の上に置いていたカバンを置いて中を漁った。
中からは参考書と、お菓子とケータイが覗いた。

「あ、飴食う~?」
「え?ぇえと」

ここは病院なんだけど、と言おうとする前にカバンの中に入っていた棒キャンディーを差し出してきた。

「あ、ありがとう」
ストロベリーミルク味と書かれた派手な外国産のキャンディーをじっと見た。

「山岡ちゃん」

名前を呼ばれたけれど何故か顔が上げられず、ぼんやりとキャンディーに描かれたイチゴを見つめていた。なんだか話をしていると疲れた。

「無理して起きてなくていいよ、横になって。怪我人相手に変なことしないから」
「うぅん、大丈夫」

適当な返事しか返せない。
イチゴの絵柄を見ながら、私は潤のこと、蔵持七海さんのことを考えていた。
痛みがフラッシュバックする。

黒くて長い髪、薄汚れた立幸館高校の制服。
はだけたシャツに血豆の浮いた指先。
閉じこめられたガラスのエントランスで対峙した彼女。

私を傷つけた人
だけど、とても悲しい歌を口ずさんでいた。
< 4 / 256 >

この作品をシェア

pagetop