√番外編作品集

そうなのかなぁ

「康平は色々あったしね。まだあんたはちゃんと人と向き合おうとしてるだけマシなんじゃない? 虐待受けた子の傷はそう簡単に治癒しないんじゃない?」

「早苗さんだって同じでしょ」

「私は大人になってから元旦那に家庭内暴力くらっただけで子供のころは平和でした」

早苗さんは「あれは若かりしころの過ちだったけど」と言って額の辺りを綺麗な形の爪でぐいぐいと押して眉間の皺を伸ばす。

「あんたは愛することに大して敏感すぎんのよね。すぐ答えを出したがる。へんなとこで割り切ってるくせに」

「褒めてる?」

「どっちでもない」

「そりゃ、叩かれたのは痛かったけどさ、昔の話だし。今は姉貴とも仲いいし……あの時のせいだとか思いたくないよ。恋愛は、俺の問題なんだし」

早苗さんは俺の頭に手を置いてなでつけた。

いつも早苗さんの爪はキレイだ。

お気に入りの化粧品ブランドは「ジル」と「ポール&ジョー」とか

やたらロマンチックで夢見がちなのに、着ている服はキャバ嬢だからドレスが多い。

似合うからいいけど。

ちなみにいつも早苗さんが染めてるサロンで、俺も一緒に髪を染める。

同じ色にしたりすると、「彼女さんと仲がイイですね」って言われる。

俺はいつも、「うん」って答えるけど、早苗さんが俺をどう思ってるかは知らない。
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