√番外編作品集
こんなこと姉貴に相談したら、姉貴は自分のせいだって凹むか、勝手にやってればとか投げ出すかのどっちかだろうし

縁の切れた親にいう話しでもないし

黒沢の言うことは昨日思い知って、むしろガックリなくらいだし。

ナチュラルに、運命の人なんて待ってたらじーさんになっちゃうよ。


「ただいまー」


アパートのエントランスに入る。

アンティークなレンガ作りが目を見張るが、所詮ボロアパートだと思う。

入ってすぐのフロアは、喫煙室に(勝手に)なっていてタバコくさいし。

って、俺が文句を言える義理はない。

ここはホスト寮で、俺と姉貴はホストの支配人の……名前を出すと大変なことになりそうだから、仮にRさんということにして、そのRさんの計らいで格安でここに住めているわけだ。

陽気な黒髪ホストのリュージと、金髪ツンデレホストのミズをはじめ男ばっかりで全く楽しくない。

「おはよーコーヘイ。お前んとこに客来てたよ」

噂をすればなんとやら、隣の部屋のホストのミズが肩からずり落ちそうなくらいに伸びたカーディガンを羽織って眠そうに螺旋階段を降りてきた。

手にはタバコ。

同い年なんだけど、全然意見が合わない。

今日も仕事帰りなのだろう。

一服したら、また夜のために寝るんだろーな。

「もー昨日は大変だったんだよ、行儀指導してくれるユゥさんって人が居なくなってね……代りのヤツがうっさくてさ」 

ミズはあくびをしながら何か分からないことを呟いて背伸びをする。
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