√番外編作品集
「……そう?」

「うん、息が合ってるっていうか……河田くんがさ自分にとって大切な人探す気持ちも分かるけど、そんなに焦らなくても大丈夫だよ。河田くんなら、絶対素敵な人に出会えるし」

山岡ちゃんは言いながら、毛布を畳んで立ち上がった。

「お姉さんは?」

「もう行った」

「ごめんね突然。北川さんが本当に真剣だったからちゃんと河田くんに伝えたくて。北川さん泣いてたんだよ。どうしていいか分からないって」

何も言えることがなくて、俺は黙り込んで山岡ちゃんの仕草を見ていた。

南都美のためにここにいるのか

それとも

「私、河田くんに助けてもらったでしょ。だから今度は河田くんのこと助けてあげたいよ」

ゆっくりと視線をあげる。

「あの事件のときのこと? 俺何もしてないよ」

「気持ちの問題。私はあの夜、1人じゃなくてよかったって今でも思ってる」

「ねぇ! 山岡ちゃんは、黒沢に振り向いてもらえなくてもいい? 自分がそんなに好きって思いがあるのに、返して貰わなくてもいいの?」

突然どうしたの?

山岡ちゃんは小さく言って首を傾げた。

「私はいいよ。好きな人を好きだと思えることが一番幸せなことだから」

手を伸ばして、山岡ちゃんを掴んだ。


思い切り引き寄せて、狭い6畳和室の真ん中で

山岡ちゃんを抱きしめた。


早苗さんや南都美と違う

柑橘系の薫りがした。

「か、河……」

「ごめん、絶対、変なことしないから」
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