√番外編作品集
「北川さんのこと、そんなにすぐ忘れられるの? 北川さんって、河田くんにとってどれだけの存在だったの?」

「南都美は……スキだけど、女神じゃない」

「私も違うかもしれないよ。ねぇ河田くん、もっと巡り合わせを大切にしようよ。河田くんはそうやって切り捨てちゃうけど、北川さんは河田くんのこと大好きなんだから」

「でも、今ピンってきて!」



「私は、気持ちを大切にしない人は嫌い!」



「…………」

山岡ちゃんはそうハッキリ言うと、俺から離れた。

俺が変な顔でもしているのか、山岡ちゃんは少しだけ躊躇して、言葉を選び直した。

「自分の幸せのためだけに、周りを傷つける人は嫌いだよ」

「……ごめん」

やっと頭が正常に動き出した気がして

もう一度山岡ちゃんに頭を下げてあやまった。


山岡ちゃんは何も言わずに俺の横を通り過ぎる。


「夕飯のつもりだったんだけどご飯作ってあるから、よかったら食べてね」

玄関が閉まる前に、山岡ちゃんの優しい声がした。

俺は何も反応できずに畳みの一点を見つめてた。



南都美、俺のことまだスキなんだ。

……なら、答えてやらないといけないよな。

山岡ちゃんも心配してるし。つまり敦ちゃんも裏にいるってことだし。

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