√番外編作品集
「河田君、家は大丈夫なの?」
「えー、うん、多分アネキは今ごろ彼氏と一緒だし」
「河田君、お姉さんがいるんだね」
「うん、レディースだけどね。怒らせるとマジで怖いよ」

河田君は、少しウロっとした目で言葉を続けた。

「ま、今は仲いいけど昔最悪だったよ。蹴り殺されるか、たたき殺されるかどっちかだったし」
「え、け、蹴り……? 姉弟ゲンカってこと?」
「山岡ちゃんは、お兄ちゃんがいるんだっけ?」
「うん、お兄ちゃんと、下に1人、あと妹代わりの犬が」
「そっか、いいね。俺はアネキと2人っきり。あぁあとお袋ね。オヤジは蒸発しちゃってさー。お袋もアネキも毎日毎日がんばってたんだけど、お袋が男つくって仕事しなくなって、アネキすっげぇ苦労しちゃって、そのストレスみんな俺に投下」

河田君は、まるで物語でもなぞるように話を続けた。

「俺は唯一の男だったけど、まだガキだったから、できることってアネキのストレスのはけ口になることしかできなくて」

なんだか聞いてはいけなかった気がして、私は声を落とした。

「辛かった、よね」
「んー、そうでもない」

河田君は、ケータイを私の足元にポンと投げて、遠くを見るような目をして続けた。

「俺、結構丈夫だったし、使命感があったんだよねこうすることで、家族が守れるならいっかなって・・・」
「強いね、河田君・・・」

「そう?でもみんな同じ状況になったらそう思うよ。俺はアネキ好きだったし、弱かったけどお袋も好きだったから」
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