狂者の正しい愛し方


***


「ただいまー!」


家に帰ってくるのが、こんなに楽しみだった日ってない。

扉を開けて、佐薙さんの手を引っ張ったまま、私は家の中に上がり込んだ。


鍵が開いていたから、お母さんはまだいるらしい。
良かった。今日は珍しく、仕事休みだったみたい。


「お母さん!いる?どこー?」


いつもは揃えて脱ぐ靴を、やや雑に脱ぐと、それをすかさず佐薙さんが揃えてくれた。

玄関から、廊下から、リビングにいるであろうお母さんを呼ぶけど、返事は無い。
寝てるのかな?


少し首を伸ばしてリビングを覗くと、ソファに座ってるお母さんの姿が見えた。
テレビを見てるらしい。

本当に、珍しいことってあるものだ。


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