狂者の正しい愛し方
「お母さんってばこんな良い天気に外に出ないなんて。」
「まあまあ晴姫。きっと仕事疲れが出たんだ。」
私を優しく宥めると、佐薙さんは言う。
「ほら、二階の自分の部屋に行って、荷物を置いておいで。」
代わりに持っていてくれた鞄を差し出される。
私はそんなに几帳面な性格ではないから、家から帰ると鞄や脱いだ服なんかはそのままなんだけど、佐薙さんは違う。
きちんとこうして、鞄を元の場所に置いてくるよう促してくれる。
こういうところも素敵だなぁ、と心の中で密かに思うけど、恥ずかしいから口に出したりはしない。
「はーい。じゃあ、ちょっと待っててくださいね。」
鞄を受け取ると、一度しっかり佐薙さんの瞳を見据えてから、
私は階段を上がっていった。