狂者の正しい愛し方
晴姫の部屋の扉が開き、そして閉まるのを待ってから、
俺はリビングにいる母親に目を向けた。
ソファに腰を下ろし、遠目でも分かるほど、やつれてぼんやりとしている。
テレビを観ていると言っても、実際は眺めてるだけだ。
本当に晴姫の母親なのか?
また同じ疑問が湧いた。
とん、とん……
その母親に向かって、俺は歩いた。
薄暗い廊下を一歩一歩、晴姫が階段を上ったように、確実に踏みしめていく。
リビングへ通じる道だ。
入り口に立つと、リビングの目映いばかりの照明が目に飛び込んできた。
晴姫の姿も目映いけれど、意味合いが違う。
この目映さは、不快だ。