狂者の正しい愛し方


よりハッキリと、母親の姿が見える。

本当に魂が抜けているかのようだ。


ふいに、ダイニングテーブルに目をやれば、散乱した書類の山。

どれもこれもが仕事関係のもので、一通り見た限りでは、学校関連のものはない。

多忙なのだな、と同情はしなかった。

晴姫に寂しい思いをさせてまで打ち込む仕事など、所詮は愚行だ。


仕事関係の書類の中には、

「………。」

病院関係のものもある。


外科や内科ではなく、精神科。

処方されたらしい錠剤も一緒に転がっている。

けれども、少しも使った形跡は無い。


ははあ。


俺は無言で、口の動きだけで呟いた。


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