狂者の正しい愛し方


精神科の書類の中に、とある人物の名前が書かれていたから。


笑いが、込み上げてきた。



「お義母さん、こんにちは。
先ほどお電話しました、晴姫の恋人です。」



笑いを抑え、落ち着いた口調で声をかけた。


ビクリ、と母親の肩が揺れた。


ぎぎぎ…と擬音でも付きそうな動きで、首を捻る母親。

目は見開かれていて、顔色は青白い。

女子高生の母親にしては若いが今の容貌から晴姫をイメージするのは、とても無理だ。


醜いと、素直に思ったくらい。



「佐薙隼弘、といいます。
どうぞよろしく。」



言葉の出ないらしい母親に代わり、知りたいだろう俺の名前を告げる。


……いや、知りたくもないのが本音だろうな。


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