狂者の正しい愛し方
それは一枚のメモ用紙で、短くこう書かれていた。
“勉強頑張って”
吃驚して顔を上げた。
余計なお世話、とも
慣れ慣れしい、とも思わなかった。
ただ素直に嬉しくて、顔を上げたそこにいた、新しい司書さんこそ…
佐薙さん、だった。
まだ20代らしくて、綺麗な黒髪にブルーグレーのセーターがよく似合っていたのを覚えている。
街中でごくたまに見かけるような、綺麗な顔をしていて、ふたつの切れ長の瞳に見つめられて、軽く眩暈がしたほど。
試験までの一週間、私はその“司書さん”のお陰で乗り切ることができた。