狂者の正しい愛し方
すると、佐薙さんは、途端に悲しそうな顔を見せた。
眉を八の字にし、また私の両手を握る。
それを頬に持っていく。
…く、癖なのか…?
「晴姫…、どうしてそんなこと言うんだ…?
俺は晴姫の恋人だ。恋人なら、相手の全てを知りたいと思うのが普通だ。」
言いながら、頬に当てていた私の手の平に、軽く唇を触れさせる。
ピクッと反応すると、佐薙さんは愛おしそうに目を細めた。
「俺は晴姫が大好きだから、晴姫のことを知りたいといつも思ってる。
勉強してる姿も、運動してる姿も、眠ってる姿も…、
…魘されてる姿も、
…泣き顔も、恐がる顔も苦しむ顔も全部…。」
「え、え…?」