狂者の正しい愛し方
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あの後、佐薙さんは言葉通り、私を自宅まで送り届けてくれた。
車を持ってるけど、いつも帰宅には使わない。
佐薙さん曰く、私と歩くほうが好きだから、だそうだ。
「もうすぐ、着くな。」
「そうですね。」
手を繋ぎながら、暗い夜道を歩く。
遠くに、私の家が見えた。
窓から明かりが漏れてるから、もう両親は帰ってるようだ。
もうすぐ佐薙さんと離れる…。そう考えると、少し寂しくなった。
「ここでいいですよ。
ありがとうございました。」
でもそんな本音は言わない。
格好悪いから。
玄関より少し離れた位置で止まって、佐薙さんを見上げた。