狂者の正しい愛し方


―――


「はぁ、はぁ…、佐薙さん、もう来てるかな…。」


10分で行く、とか言ってたのにもう30分も経ってる。


仕方ないんだよぉ!!
信号は行く先々で全部赤になっちゃうし、近道は不良の人達が喧嘩始めちゃってたし、空き地で猫が私を誘惑するようにじゃれてきたし…!!


…佐薙さんみたいに、恋人以外何も見えなくなればいいのになぁ…。

…あ、猫だけは許してほしい。



「…あ、いた…。」


駅前の、最後の信号にも引っかかってしまった。

上がった息を整えながら車道の向こうの、

駅前広場のベンチに座ってる佐薙さんを見つけた。


下を向いてるから、本でも読んでるのかな?

佐薙さんなら、こんな遠い位置からでも名前呼びそう…。


なんて考えながら、疾走でぐしゃぐしゃになってしまった髪を適当に整えた。


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