きみの視る幻想(ゆめ)
予想通り、相手は細い瞳をさらに細め、

同じように細い眉を皮肉たらしく歪めてアオを見る。

友人―――サクラは、いつもアオを馬鹿にするのだ。

立てた右足に右腕をだらりと乗せ、

黒いパイプベットにサクラはもたれていた。

伸ばしたサクラの左足が、

胡坐を組んだアオの右膝へわずかに触れている。

焦げた茶色の少し長い髪を、

それまで放り出していた左手でかきあげてから、

サクラは口を開いた。


「違うだろ」

「違う?」


問い返すアオに、サクラはわざとらしく首をひねってみせる。


「そうさ。
 ヒトはな、
 記憶が薄れることを
 思い出に変わったって
 言うんだ。
 免罪符みてぇなもんだな」

「免罪符?」
 

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