きみの視る幻想(ゆめ)

【03】

外から響いた大きな声に俺ははっとなる。

子供の声だった。

目の前にある鉢植えに、苦笑いしてみせた。

幻想は儚いね。

起きた時となんら変わりのない部屋で時間だけがわずかに動いている。

俺は立ち上がり、服を身につけることにする。

シャツの袖に腕を通す。昨日、洗って干しておいたやつだ。

まだ生乾きで気持ち悪かったがしかたがない。

今日のように天気がいいと、たくさんはない着替えを

総ざらえして洗濯したくなる。

ひとところに落ち着くつもりならそれもできるのだが、

俺にその気はないのだから、これもまたしかたがない。

なんとなく窓から外を見ると、外でガキが遊んでいた。

五歳くらいの子供が二人。

十四歳までの子供は、確実に前にあった世界を知らないのだなと思った。

平和すぎるほど平和な、羊以上の従順さで明日を信じていられた世界。 
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