きみの視る幻想(ゆめ)
中央の奴らはいったいなにをやっているんだろう。

別に前の世界を取り戻してほしいとは思っていないが、

もう少し道の整備くらいはしてほしいもんだ。

羊飼いは彼らじゃなかったのかもしれない。

思いながら、俺は一メートルほどの亀裂を飛び越える。

越えた先にビルの頭が見えた。

何十階建てだったのかはもうわからない。

屋上の壊れた貯水タンクと、その下の階しか地面の上にはないからだ。

階段が生き残っているとも思えないし、階下の探索は無理だろう。

俺は貯水タンクのそばでひと休みすることにした。

ビルまで歩いてゆき、屋上の手すりに手をかける。

ひょいと飛び越えた。

本当を言うと、階下へは行きたくなかった。

死体というか、人骨がゴロゴロしている場所で

昼寝などしたら祟られそうで恐い。
 
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