きみの視る幻想(ゆめ)
貯水タンクにもたれ、俺は座り込む。

時間の流れも空気の流れもゆっくりだ。

本当に俺は呑気だなぁ。

呑気だと思っていることがすでに呑気だ。

身の危険を感じていないわけではない。

恐いほどにそれは感じている。

ただ。

コンクリートの上に置いた鉢植えをじっと見つめる。

俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ。

死ぬわけにはいかないのなら、生きてゆくしかない。

漫画の主人公のように。

どんな苦難があろうとも、だ。

こいつが生きている限り。

俺も死ぬわけには、いかない。

俺はゆっくりと目を閉じた。

漫画の主人公だって昼寝くらいしたさ。
 
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