きみの視る幻想(ゆめ)
【05】
「俺は物覚えが悪いくせに、
物忘れも悪いのかも
しれないと思うことがある」
アオは顔をしかめてそう言った。
学生食堂の長くて安っぽいテーブルの上には、
湯気の立ち上がるうどんが置かれている。
正面に座るサクラの前にはカレーライス。
どちらも定番といえる代物だ。
サクラは眉を寄せ、首をかたけた。
「は?」
アオはむつかしい顔のまま、唇をとがらせる。
「やっぱりやめた。
馬鹿にされそうだ」
「今更だろ」
即座に言われ、さらに唇をとがらせた。
「言ってもいいのか?」
カレーライスをすくいとったスプンをサクラは少し持ち上げてみせる。
「どうぞおかまいなく」