キス屋

部屋にリョウスケさんの
姿は見当たらなかった。


シンプルな部屋だった。


窓は小さいのが1つ。
ダブルベッドが1つ。
大きなソファが1つ
大きなテレビが1つ。

で、お風呂とトイレがあるだけ。

8畳、ってとこかな。


「ご指名ありがとうございます」


ひょこ、っとどこからか
彼は現れた。


「あ、あの...!」


あたしの顔を思い出したのか、
「ああ、」と呟いてた。


「来てくれてありがと。
 その後、大丈夫?」


はい、と頷くと

「まあ座ってよ」

と言ってくれた。


ふわふわのソファに
二人で腰掛けた。


「ところで、名前は?」

「...え、と、えあです。
 「恵愛」で、えあ。」



自分でそう言うの、
嫌だった。


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