キス屋
「それにさあ、
『愛に恵まれる』なんて、
最高に幸せな事なんだよ。」
リョウスケさんは
さらに付けたした。
「良い名前すぎて羨ましい。
俺なんて、リョウスケ。
普通だよ。1つの学校に
1人は絶対居るね。」
あたしはふふっ、と笑った。
「まあ、自分の名前の良さに
気付いたなら、もう嫌いって
言わないでね、約束」
リョウスケさんは小指を出した。
小さい頃、よくやった。
「「ゆーびきーりげーんまん
うそついたら針千本のーます
ゆびきったっ」」
言い終えると、あたしたちは
仲良くなった気がした。
持ち金は2000円だけ。
もうすぐ一時間経つ。
1000円で済ませたいと言う
ケチな心から、あたしは
帰る事を彼に告げた。
「そっか、残念」
「本当にありがとございました。
あ、そう。これ、お礼です」
「お礼?」
「はい、助けてもらったから」
「....ああ」
あたしは行く時に買った
ドーナツを差し出した。
どの種類が好きなのか
分からなかったから、
自分の好きなものを買った。
「じゃあ、さよなら」
「また、来てね」
「はいっ」
思わず、言ってしまった。