キス屋
ムカっと来たあたしは
案内人にむかって、


「なんなの、あの人?」


と言った。

案内人も困った顔を見せた。
しかし、あたしの機嫌に
困った訳じゃなかったらしい。


「...実は店側も参ってるんですよ。
 あのお客さん、リョウスケに会っては
 結婚して、結婚してと迫ってるんです。」


「え!!?」


「どうやらリョウスケと仲良くなった
 ばかりに、勘違いしたのか…
 自分たちは交際してると、
 思い込んでるようで」



なにそれ...?



「実は先日、婚姻届まで
 持って来たんです。
 さすがに困りました。
 多分、今日も…」



「え...っそんな...」



今の女性が、リョウスケに
プロポーズ...??



あたしは訳が分からないままだった。





「ごめん、待たせちゃって!」



するとリョウスケが
いつもの笑顔で出迎えてくれた。



「あ、...リョウスケ」


「では、ごゆっくり」


案内人もパッと消え去った。



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