キス屋
「....そか」


「俺、あの人の事
 『お客さん』としてしか
 しゃべってないんだ」


「そりゃ、お客さんだもの」


「だよね。まあ、それは
 そうなんだけど、
 勘違いさせちゃったみたいで。」


「付き合ってる、って?」


「うん。彼女さ、最近失恋した、
 ってここに最初はきたんだ。

 で、慰めてあげてた。
 傷が癒えるように、と思って。
 
 ただそれだけで、
 付き合ってる訳ないよな?」



あたしは頷いた。





「...なあ、恵愛知ってる?」



「え、何が?」



「俺、客の事呼び捨てにしないの。
 絶対"さん"つけるの。」



「...へ?」



リョウスケは、今まで普通に
あたしの事「恵愛」って呼んでた。

今も、呼んでた。


「相手には呼び捨てさせる。
 けど、自分は絶対しない、って
 決めてたんだ」
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