アルタイル*キミと見上げた空【完】
もちろん、その頃には私の中では「栗原さん」の存在は自然と大きくなってた。
けど、私は高校生で、彼は大学生。
大学に遊びに行くたびに、キャンパスですれ違う大人びた女性の姿がどんどん気になってくるようになって、私は自分の気持ちに気づいてからダイ達の付き添いを断るようになった。
私は、あきらめようとしたんだ。
だから、何度目かに行った映画館の中で、急に手を握られて、小さく、
「好きだ」
と「栗原さん」がつぶやいた声は、
ちょうど湧き上がった笑い声の中で、しっかりと私の耳には届いていたけど、
信じられなくて、
しばらく呆然としていたんだ。
そんな私の様子を見て、私の上にかぶせるように置いた手の力を少し弱めて
「ごめん。もしかして、好きな奴とか・・・いる?」
って聞いた声は、今までで一番弱そうなかすれ声で、
「栗原さん」が緊張しているんだ、ってことは、その手のかすかな震えからもやっとわかったんだ。