アルタイル*キミと見上げた空【完】
「しお・・・」
そう唇が動いたような気がしたけど、それは言葉にはならずに、ただボールの跳ねる音だけが、響いていた。
「凱?」
なんで来なかったの?
っていえなかった。
彼の眼は真っ赤で、透明の涙が頬を伝っていることが遠目に見えたから。
「汐、俺本当は・・・・・・」
やっと言葉になった彼の声は、後何かをつぶやくように唇が動いて、そのまま止まってしまった。
「凱?」
私も張り付いたように体が動かず、ただ、彼の名前を呼ぶことしかその時はできなかった。
ボールがころころと転がっていき、何かに跳ね返って止まった、その瞬間に、
彼の体はくるりと振り向き、そして反対のドアから出て行ってしまった。
「凱?!」
私の声だけが体育館の中に響きわたっていた。
そして、凱は私の前から姿を消してしまったんだ。