アルタイル*キミと見上げた空【完】
行き先もわからないけど、ぎゅっと握ると、自然に力を込めてくれるこの手に今は私の気持ちを全部集中させていたい。
少しでも、気を緩めると、さっきのあの白い病室の時計を思い出してしまいそうになる。
「凱」
「ん?」
電車の外に流れる風景を見つめたまま、凱は答えた。
「結構、有名人なんだね、凱って」
「あ~~~・・・・・どうだろ」
「芸能人みたいになっちゃったりして」
「それは、ないでしょ」
アメリカに行っちゃうもんね・・・・
言いかけたその言葉は、単純に凱がいなくなるという寂しさと、病室の時計、両方を思い出させて、私は口をつぐんだ。