アルタイル*キミと見上げた空【完】

「よっ!」


手を挙げて、勢いよく言った私の言葉に周りの人がちらっとこっちを見る。


し、しまった。


気合い入れすぎた…。



「ブッ……なんだよ、お前。どんな遠くに挨拶してんだ、って話」


吹き出して笑う凱の顔はやっぱりあの頃と変わらない。


けど、今度は胸の痛みもなく凱を見れた。


痛み、よりも、この前会ってから感じてたぎこちなさが薄まった気がして、嬉しい。


「凱、笑いすぎだって」


ようやく笑いが収まった凱はそれでもまだ息を整えながら、言葉を続けた。


「だって……こいつさ、何年たってもかわんねーんだもん。な?」


な、って私にふらないでよ。


「おこんなよ、汐。ようやく帰ってきたなあ、って嬉しいんだから」


凱の多分何気ない一言が私の心の奥をひろっていかないように、私はわざと話題を変えた。
< 485 / 640 >

この作品をシェア

pagetop