アルタイル*キミと見上げた空【完】
女の人が少し背伸びをするように、男の人にキスをしてる場面。
こっちからは顔はわからないけど、あの…男の人の後ろ姿は間違えることなんかない。
凱……。
そして、凱の腕を掴んでる細い手の持ち主は、きっとサキちゃんだ。
時間が一瞬止まったかのように思えたけど、それは私の思い違いだ。
確実に時間は進んでる。
過去から現在。現在から未来へ。
それは誰の時間だって同じ。
私にしたって、凱にしたって。
「じゃ、先に行ってるね」
サキちゃんの声がして、足音が通り過ぎていく。
けど、私は動くことができなかった。
ショック……なのかな。
よく、わかんない。
木に寄りかかって、もう一度上を見上げると、銀色の風船が風に揺られてキラキラと光をまたたかせてる。
ううん。
瞬いて見えるのは、風のせいだけじゃない。
わかってるつもりなのに、こうなるってことはわかってるつもりだったのに。
なんで、
なんで、涙がこぼれるんだろう。
心が……感じないようにしていた部分が……「後悔」という名の刃物で引き裂かれ始める。
そんなの、見たくない。
見たくない……っ!