アルタイル*キミと見上げた空【完】
あわてて目をこすってからとっさに答える。
普通。普通にしなきゃ。
「あの、風船が……」
「は?……あぁ」
一緒に見上げたその先に、銀色の風船が揺れている。
「あれ、お前の?」
「ううん。けど、なんか気になって。もうちょっと、なんだけど…」
瞬間、風が揺れる。
隣りから伸びた手がいとも簡単に風船から伸びた紐の先をつかんだと思ったら、懐かしい香りがふっと凱からこぼれて消えた。
また泣きそうになるのを喉の奥でぐっとこらえて、必死で言葉を出した。
「ありがとう……」
お互いの指が触れるか触れないかの距離で、渡されたその紐の先で、銀色の風船がゆらゆら夜の風に揺れていた。