アルタイル*キミと見上げた空【完】
凱は一瞬驚いた表情をしてからすぐに表情をこわばらせて、横を向いた。
・・・さっきまでの穏やかな胸の鼓動は、すぐに逆流を始めだす。
ドキドキ、というより、ドクンドクンと荒く体中に血液を送り始めた。
「凱」
修ちゃんの声に、そして、つながれた左手から力が伝わってくると同時に、ようやく我に返って修ちゃんを見つめた。
修ちゃんは、真剣な顔をしてただ凱を見つめていた。
修ちゃん・・・
「修、ちゃん?」
声に出したいのに、音にはならない。
歯がゆいのに、それ以上何も聞けないと言うことが、修ちゃんの横顔に厳しく現れていた。
「おばさま、修兄、ほんとにおめでとう」
この張り詰めた空気を感じているのは、きっと私達だけ。
修ちゃんママも、サキちゃんも、幸せそうに笑って話してる。
「おじさまに電話をしたら、きっとここだろう、って。あ~~、うらやましいな!汐さん、知ってた?ここってなかなか予約がとりにくいお店だって」
ううん。知らないし、今は・・・そんなこと・・・・・どうでもいいし・・・。
「サキ!悪い、俺帰るわ」
響いた凱の声に、きっとここにいる人はみんな振り向いたけれど、
私はそれでも彼の方をむくことは出来ずに、床に広がる真っ白なドレスのすそをただ見つめていたんだ。