アルタイル*キミと見上げた空【完】
「お前と離れてから・・・この間もずっとずっと楽しみにしてた。お前といつか会えるだろう、って・・・・・・例えお前が他の男の隣にいる、ってわかってても」
凱の声が、体中にじんわりと染み渡っていくようで、ゆっくり目を閉じた。
あの頃の思い出が鮮やかに蘇ってくる。
手をつないで走った校庭。
凱を探した河原の草いきれ。
カバンで揺れてたキーホルダー。
思い出と一緒に、涙が頬を伝ってこぼれ落ちる。
「汐」
名前を呼ぶ、あの頃と同じ低くてやわらかい声。
目を開けると、凱が月の明かりを横から受けて私を見つめてた。
「好きだよ」
響いた言葉は、まっすぐに私の胸に突き刺さる。
言葉に出来ない想いはかすかな嗚咽となって私の喉を苦しめた。
「アメリカに行こう。もう・・・・離れたくない・・・・離したくない」
どうしよう・・・・。
こんなに幸せな言葉は聞いたことがないのに、
うつむいた私の目に、左手の指輪がキラッと光ったように見えた。
銀色のリングが、修ちゃんの手に握られた杖の色とかぶって見える・・・。
ダメ、だよ・・・・ダメ・・・・なんだ。