アルタイル*キミと見上げた空【完】
「ごめん。泣かないで、汐」
ゆっくり体を起こしてベッドに腰掛けた凱は、向こうをむいたまま、左手で顔を覆った。
「わかってたことなのにな。ハハハ・・・あいつと一緒にいる、ってわかってたことなのに・・・・」
「凱・・・」
凱はその手で髪の毛をかきむしるようにしてから天井を仰いだ。
「覚悟は出来てたから、帰ってきたのに・・・・・・。4年間、もしかしたらやっと忘れることが出来るかもしれない、って思ってた。あの時のお前の選択は間違ってなかったんだろうな、って・・・思うようにしてたんだ・・・・・けど・・・」
けど?
「雑誌で見たお前の顔が・・・」
「ざっし・・・?」
「修也の横に写ってたお前の笑顔が・・・・すげー変だったんだ」
「変・・・?」
体が一瞬ビクンと波打った。
凱がじっと、まっすぐに私を見つめてる。
とらわれたように動けない。
「最初は・・・4年間でお前も変わったのかもしれない、笑い方が変わったのかもしれない、って思うようにしてたんだ。けど・・・こっちで汐に会ってわかったよ・・・」
「・・・・やめて」
「お前はずっと・・・」
「凱、やめて!」
悲鳴に近い私の声が部屋に響き渡るのと、再び長い腕が私の体を、捉えるのとほぼ同時だった。
そして包まれる彼の香りに、私はまた目を閉じた。
「汐・・・」
彼の吐息が耳元で揺れる。