アルタイル*キミと見上げた空【完】
「着いた」
車のエンジン音が切られて静かになると、外からの音が際立って聞こえる。
「凱、ここ・・・・」
「懐かしいだろ?」
ドアを開けると、響く音と、香り。
海。
合宿で、凱と歩いたあの砂浜が目の前に広がっている。
「さすがに、もう人はいないな」
半袖から伸びた腕を掌でさすりながら凱がつぶやいた。
そうだね。
あの時は、夏の始まりだった。
今は、夏の終わり。
「どうして、ここに?」
「ん?なんとなく・・・・遠くにドライブしようと思ったらここに着いた、みたいな?」
は?
なんなのそのノリ・・・・。
「ね、凱のそういうとこ、少しひどくなってるよね」
「あ?そう?・・・・俺ね、もう思ってることとか、したいこととか我慢するの、やめたんだ」
大きく腕を広げて叫ぶ凱。
潮風をうけて膨らむその背中がなんだか羽みたいに、見えた。
まるで、鳥みたい。
自由な、凱。